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大学職員の能力開発

投稿日:2024年 09月 06日

 少し前の話になるが、二〇二一年二月に、東京大学大学経営・政策研究センターが行った第二回の大学職員調査結果について、大学職員のキャリア形成という視点から考えてみたい。二〇二一年実施の第二回目の調査で新たに加わった質問として、「あなたは、以下の経験を通じて成長したという実感をお持ちですか」というものがある。その答えとして最も多いのが、日常業務の実施を通じてというもので、とても成長したが17.5%、成長したが68.3%となっている。二番目の、学外研修・情報交換会への参加がそれぞれ 7.5 %、42.0%なので、高い数値と言っていいと思う。

 もちろん、仕事を続けていくことで程度の差はあるが仕事力は向上するので、成長したという実感を持ちやすいということはあるが、学外研修・情報交換会への参加や、三番目に高い関連書籍などでの自学自習と比べると、知識だけではなく実践力が養成されるということが、成長実感につながっているのではないだろうか。ある研修で、講師が参加者に対して、今日の研修が役に立ったと思う人は挙手してくださいといったところ、全員が挙手をしたとのこと。続けて、では今日の研修の内容を自分の大学で実践できそうな人はと聞いたところ、誰も手を上げなかったという。この話に表れているように、研修は知識の習得に終わってしまうことが少なくないといえる。

 日常業務の実施を通じて職員の成長を図るためには、本人の意欲や姿勢に加えて、On The Job Training(以下OJTと表記)といわれる、業務を行うに際しての先輩、上司等からの個別の教育、指導体制の整備が不可欠なこととなる。OJTは、次のようなステップで実施される。

  • Show(見本を見せる)
  • Tell(やり方を説明する)
  • Do(やらせてみる)
  • Check(評価し、追加指導する)

 現状はさまざまであろうが、私の限られた知見では、教わる側がきちんと業務を遂行できるようになるまで、この四段階のステップを継続して実施している例はあまりないように感じている。やり方を説明し、あとは教わる側が、業務を遂行していく中で出てくる不明な点を質問するという程度で済ませているケースが多いのではないだろうか。例えば、広報業務の一つである高校訪問であれば、予約のとり方、どのようなことを説明するのかといったことを教え、いくつかの高校を一緒に回って見本を見せるといった指導が一般的で、適切な高校訪問となっているかどうかを確認し、追加指導するといったことまでは、行われていないケースが多いのではないかと思われる。

 研修等に送り出すことも有用なことではあるが、日常的に成長を図ることのできるOJTの充実を図ることが急務である。