ラテラルシンキング
投稿日:2022年 02月 27日
多面的・多角的に考えるメリットとして、新たな気付きや可能性を見出せる、すなわち柔軟に考えられるようになるということがあるが、同様な思考法としてラテラルシンキングというものがある。ラテラルシンキングとは、1960年代にイギリスの心理学者であるE・デボノが提唱した思考法で、我が国では「水平思考」と訳されているものである。
ロジカルシンキングが、論理を繋げて掘り下げていくというような垂直型の思考であるのに対して、ラテラルシンキングは、水平方向に自由に発想を広げていくというもので、順を追って考えるものではないため、斬新なアイデアを生み出すのに有用な思考法といえる。ラテラルシンキングの説明でよく用いられているのが、モノを公平に分けるというケースである。例えば、七つのリンゴを三人で公平に分ける方法を考えるときに、二つずつ分け、最後の一つを皆の意見を聞きながら三等分するといった考え方はロジカルシンキングであるが、ラテラルシンキングでは、全部をジュースにして三等分するといったように、そのまま分けるという常識的な前提を超えた発想を生む考え方といえる。
競争環境が激化し、常識的な方法だけでは有効な差別化が図れなくなっているような市場で差別化を図ろうとする場合や、利用者が減少し衰退していく市場を回復させるような場合においては、大変に有用な考え方ではないかと思う。例えば日本茶の市場である。私たちの世代は、まだ日常的にお茶を飲んでいたが、私の子どもたちの世代を見ると、お茶を飲むケースは非常に減っているように思う。このままでは衰退していってしまうと思われた日本茶市場の回復策として、若い年齢層が愛用していたペットボトルにお茶を入れて売るということを考え出したのである。
発売された当初は、お茶を有料で買う人がいるのだろうかと疑問に感じた。というのも、お茶というものはジュースやアルコール飲料と違って、飲食店でも無料で出てくるものであったので、わざわざお金を払ってお茶を買う人はあまりいないだろうと思ったからである。それが今ではご存じの通り、会議での飲み物として、お弁当を出すときに付ける飲み物として、ペットボトルのお茶は多くの場で使われるようになってきている。
競争が激化している市場での例としては、スポーツクラブ業界で店舗数を拡大し続け、現在、二千店舗を超える規模になっている「カーブス」が挙げられる。スポーツクラブ市場において一般的に競っていることは、多彩な講座の開講、筋トレ等のマシンの充実、プールの併設、そしてお風呂など快適に利用できる環境整備といったことである。これに対してカーブスは、顧客を女性に特化し、利用時間は三十分間、しかも服装も自由なので、買い物のついでにちょっと立ち寄って、気軽に運動ができるというように、これまでのスポーツクラブが当然の条件と考えていたことを覆し、それによって、十分な時間の取れない主婦層といった新しい顧客を開拓したのである。
このように、世間や業界の常識内で競うのでなく、それを超えた発想をすることで新たな需要や顧客を生み出すことができるのである。これは競合のいない新しい市場を見つけていくという、ブルーオーシャン戦略とも通じるものである。大学も、さまざまな制約がある中ではあるが、新たな発展を期すためには、業界の常識を超えた発想が求められているといえる。海外の例ではあるが、キャンパスを持たないミネルバ大学などは、その例として挙げられるものではないだろうか。
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