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組織をまとめるKPIとは

投稿日:2021年 05月 16日

 KPI(Key Performance Indicatorの略称、重要業績評価指標)は、組織目標の達成に向けて業務プロセスが効果的に実行されているかどうかを計測し、評価する指標であるが、KPIをマネジメントするということは、人や組織を目標達成に向けて動かす仕組みをつくるということなので、組織の戦略そのものであるということができる。組織を目標達成に向けて、効果的かつ効率的に動かしていくというマネジメントの手法であるので、特に、動きにくい組織の代表のように言われている大学を動かしていくためには、大変有用な手法になるのではないかと考えている。

   リーマンショックが契機となり、我が国を代表する企業の一つであった日本航空が経営破綻となった。その再生を目指すために、さまざまな方策がとられたが、その一つが顧客満足度を向上させるためのKPI設定であった。顧客満足度を上げるためには、利用しやすい料金設定や機内サービスの充実など、いろいろな選択肢があるが、利用する顧客にとって不可欠であり、かつ基本的な品質は、決められた時刻に到着するということであると判断し、定時到着率をKPIとしたのである。

我が国においては、電車などの交通機関は定時に出発し、定時に到着することが当たり前であるという感覚があるので、それを前提に予定を組むことが日常的に行われている。したがって、例外的な状況を除けば定時に到着するということは、利用者、特にビジネスで利用する客にとっては不可欠の最低の条件であるため、ここが守られないと、いかに他のサービスが充実していたとしても、満足度は低いものとなってしまうのである。

 定時到着率がKPIとして設定されると、その率を高めるために各部門が取り組みを始めた。定時に到着するためには、出発が遅れないということが必須のこととなる。そのために、搭乗に関わるスタッフは分かりやすいアナウンスや表示といったことを工夫し、搭乗のプロセスができるだけ円滑に行われるように努力をしていった。機内の清掃をするスタッフも、なるべく短い時間で作業が終了するように工夫を重ねていった。このような取り組みによって定時到着率は向上していったのであるが、各部門独自の取り組みだけでは限界を感じるようになった。

そこで考えられたのが、各部門の連携ということであった。機内の掃除に関しては、担当スタッフだけでなく、キャビンアテンダントも手伝うことで、より迅速に終了できるようになった。また、航空路における天候状態についてもJAL便同士で共有することで、より正確な情報を得られるようになり、適切な飛行計画も立てやすくなった。このような連携の結果、定時定着率はさらに向上し、二〇一二年にはついに世界一となっているのである。

このように、定時到着率という、顧客満足度を高め、ひいては業績向上につながることのできる適切なKPIを設定することで、各人の目指すべきもの、行うべきことが明確になるとともに、部門間の連携の必要性、有用性についても認識できるようになることで、組織の一体性も生まれ、それが目標達成を促進させるという、好循環となっている。