ブログ

組織目標を共有するためには

投稿日:2020年 12月 25日

 大学組織の目標と言われて、まず想起されるのは各大学の建学の精神ではないだろうか。私の短期大学でも、将来を考える会議の中で建学の精神が話題となった際に、本学の建学の精神は何かということに議論が及んだ。開学時からいる職員や勤務経験の長い教員に訊いてみたところ、教育のモットーはあるが、建学の精神にあたるものはないのではないかということになった。その後、いろいろな資料にあたってみた結果、法人全体の建学の精神として、キリスト教主義教育と、新島襄の教育理念ということがあるということが分かった次第である。

 そのような状況であったので、私が学長に就任した時にも、建学の精神ということは全く意識せず、大学のキャッチコピーとして「就職にも進学にも強い短大です」というものをつくり、教職員に対しては「学生の卒業後の進路を確かで豊かなものにする」というコンセプトを提示し、それに基づいた教育活動を展開しようということを明らかにした。そしてそれを発展させた新たなものとして、現在は「学生の人生を支える二年間」を与える短大になるということを教職員に伝えている。

 このようにコンセプトを明示したことによって、教職員の活動の方向性を合わせるということは、ある程度、できたのではないかと感じているが、組織目標を教職員に心から納得してもらい、共有してもらうためには、新たな視点を付け加える必要があるように思う。 それは何かというと、学生にどのような価値を与えるかということに加えて、働く教職員にどのような価値を与えるかということである

 私自信、そのような気持ちを持っていなかったわけではないが、この点を強く教職員に伝えてこなかったことを、反省しているところである。五〇期以上、連続して増収増益という素晴らしい成果を挙げ、全国の経営者やマスコミにも注目されている長野県の伊那食品工業という会社の企業目的の欄には、「企業は本来、会社を構成する人々の幸せの増大のためにあるべきです。」と書かれている。やはり人間、自己の満足につながらない目標には、心からの共感はできないものである。