意欲を引き出す業務編成
投稿日:2020年 11月 07日
心理学者のハックマンと経営学者オルダムは、仕事そのものの特性が人の意欲に関連すると考え、その研究内容を「職務特性モデル」として提唱している。職務特性モデルによれば、「技能多様性」、「タスク完結性」、「タスク重要性」、「自律性」、「フィードバック」の五つの特性を持つ仕事であれば、モチベーションが高まるとされている。
技能多様性とは、単調な仕事ではなく、自分が持つ多様なスキルや才能を活かせる仕事であることを意味する。例えば新規事業の開発といった業務であれば、企画力や渉外力など、さまざまな能力が求められるので、やりがいを感じやすいということになる。
タスク完結性とは、始めから終わりまでの全体を理解した上で、関われる仕事であるということである。業務の意義を理解しないで行う部分的な仕事であれば、やりがいを感じることは難しいであろう。
タスク重要性とは、その業務が成果を上げるために重要なものであるということである。どの業務も成果を上げるためには必要なものではあるが、重要性、影響度が高い業務ほど、やりがいは感じられるものである。
自律性とは、計画や手法など仕事のやり方に関する自由度が高いということである。心理的リアクタンスと言われているが、人は生来的に自分の行動や選択を自分で決めたいという欲求があるので、それを他人から強制されたり奪われたりすると、例えそれが自分にとってプラスの提案であっても無意識的に反発的な行動をとってしまうのである。子供がよく言う「宿題をやろうとしてたのに、やれって言われたのでやる気がなくなった」と同様な状況である。
フィードバックとは、自分が行った業務の成果、結果を確認できるということである。確かに成果が計測できる営業や販売といった仕事の方が、成果が可視化しにくい業務よりも、やりがいを感じやすいと思われる。これらの五つの要素が、どの程度、意欲の生じ方に関係するかを表した算式は次のとおりである。
意欲が引き出される度合い(Motivating Potential Score)
{(技能多様性 + タスク完結性 + タスク重要性) ÷3} ×自律性 × フィードバック
これを大学の業務で考えた場合、最も高めやすい要素は技能多様性ではないだろうか。これまでの大学の事務局編成を見ると、総務課、経理課、教務課、学生課、就職課といったように、業務は比較的細分化されているケースが多いように思う。私が以前いた大学では、入試広報部門と就職支援部門を統合した。当初は両方、中途半端になるのではないかとの危惧も出ていたが、結果は人員の効率化も図れたし、期待した以上の成果を上げることもできた。
統合の動機は人手不足であったが、統合してみての感想は多くの業務を処理できたという満足感であった。
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